札幌弁護士青野渉が交通事故被害について、詳しく解説します。
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交通事故被害
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刑事記録の入手方法と保管期間
 交通事故の被害においては、刑事記録を、できるだけ早く、なおかつ、できるだけ広く、取得することが重要になります。また、刑事記録は、保険期間が経過すると廃棄されてしまいますので、保管期間経過前に、きちんと入手しておくことが必要となります。
 ここでは、刑事記録の入手方法とその注意点について説明いたします。
捜査段階
 捜査中には、一切の刑事記録は謄写(コピー)はできません(刑事訴訟法47条)。
 なお、親切な検察官が、捜査状況の説明のために、実況見分調書などを見せてくれることはありますが、コピーをもらうことはできません。
 起訴後〜第1回公判前の段階
 起訴後、被害者から申出があれば、特に支障のないかぎり、公判提出予定の刑事記録については、閲覧又はコピーをさせてもらう運用になっています。これは、平成20年9月5日の検察庁の通達(その後、平成26年10月21日付「犯罪被害者等の権利利益の尊重について」(依命通達)に引き継がれています。この通達は被害者の権利に関する重要な通達であり、ここをクリックして、全文をご覧いただけます。)によるもので、法律的な根拠があるわけではありません。開示の範囲は個々の検察官が判断することになりますが、交通犯罪被害に関しては、通常は関係者の個人情報等を除きコピーが許可されているようです。
公判段階
 被害者参加制度を利用していない場合には、第1回公判後に、裁判所において、犯罪被害者保護法3条による謄写(コピー)が可能です。裁判所の許可が必要ですので、申請してからコピーを入手するまでに、数日かかります。また、犯罪被害者保護法3条による場合には、公判に提出された記録だけですので、刑事裁判で、被告人の側で「不同意」にした部分については、墨塗りになっていたり、提出されていなかったりします。
 したがって、証拠に関しては、被害者参加をした場合のほうが、開示を受けられる範囲は広いといえます。逆に、証人尋問調書等については犯罪被害者保護法3条を利用してコピーをすることになります。
判決確定後
 判決確定後は、検察庁において、刑事確定訴訟記録法に基づく謄写が可能です。
 なお、刑事記録は、判決書とその他の記録を別に管理しておりますので(刑事確定訴訟記録法2条2項、別表)、判決書もほしい場合には、「判決書含む」と明記して申請しましょう。
不起訴処分後
 不起訴処分後は、検察庁において、不起訴記録として保管されています。これについては、刑事訴訟法47条により、原則として非公開とされています。不起訴記録の開示に関しては、これまでにいくつかの通達が出され、運用の改善が行われておりますが、現在は、平成20年11月19日付法務省総第1595号刑事局長依命通達「被害者等に対する不起訴事件記録の開示について」によって運用が定められています。
 これについては、紆余曲折を経て、現在では、以下のような形になっています。
実況見分調書・写真撮影報告書・検視調書等
 現在、実況見分調書・写真撮影報告書・検視調書等の客観的証拠に関しては、被害者からの申請があれば、通常は、開示を受けられる扱いとなっております。
供述調書について
 実況見分調書等の客観証拠と異なり、被疑者や目撃者の供述調書については、原則として、開示が認められておりません。平成16年5月31日付通達以降、場合によっては開示を認めるという運用に変更していますが、そのためには、以下の全ての条件を満たさなければならないこととなっております(極めて例外的です。)。
@ 民事訴訟による文書送付嘱託の手続によること
A 当該供述調書の内容が、当該民事訴訟の結論を直接左右する重要な争点に関するものであって、かつ、その争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど、その証明に欠くことができない場合であること
B 供述者が死亡、所在不明、心身の故障若しくは深刻な記憶喪失等により、民事訴訟において、その供述を顕出できないこと、又は当該供述調書の内容が供述者の民事裁判所における証言内容と実質的に相反する場合であること
C 当該供述調書を開示することによって、捜査・公判への具体的な支障又は関係者の生命・身体の安全を侵害するおそれがなく、かつ、関係者の名誉・プライバシーを侵害するおそれがあるとは認められない場合であること
謄写(コピー)の留意点
 確定記録に関する刑事確定訴訟記録法4条1項で、原則として「閲覧はさせなければならない」と規定しておりますが、「謄写(コピー)」については具体的な記載がありません。また、不起訴記録に関する前記の各通達でも、被害者参加対象事件に関しては「閲覧」とだけ記載されていて、明確に「謄写」の権利があることは記載されていません。この点については、検察庁の内規である記録事務規程17条で「保管検察官は,保管記録又は再審保存記録の閲覧を許すときは,その謄写を許すことができる。」と規定されており、保管検察官の裁量で、謄写を許可することが可能となっています。規程上は裁量ですが、現在の運用では、少なくとも交通犯罪事件で謄写(コピー)を拒否される(閲覧のみ許可するケース)ことはないと思います。
 ただし、「刑事記録をコピーする」方法については各地によって扱いがまちまちです。具体的にいうと、被害者自身が、検察庁(あるいは検察庁内にある弁護士会設置)のコピー機が利用できる場合と、利用できない場合があるようです。これは、謄写をする各裁判所や検察庁にお問合せください。コピー機を使えない場合には、弁護士に依頼してコピーしてもらうのが一番早道です。最近では、多くの弁護士会で犯罪被害者相談の窓口を設けていますし、また、日本司法支援センター(法テラス)では、犯罪被害者精通弁護士を紹介していますので、そこで相談してみるのが良いでしょう。
 また、実況見分調書などの写真は、カラーで入手しておいたほうがよいです。
 裁判所・検察庁の謄写用コピー機は、白黒が多いですので、カラーで謄写したい場合には、デジカメやスキャナーを持参して、コピーをする必要があります。カラーコピー機が利用できるかどうかは、事前に、裁判所・検察庁に確認しておいたほうがよいでしょう。
刑事記録の保管期間
起訴された場合
 起訴された刑事事件の記録の保管期間は、刑事確定訴訟記録法2条及び別表、同法施行規則で細かく定められています。
 言い渡された刑の重さによって保管期間が異なりますが、5年未満の懲役・禁固刑の場合には、保管期間は5年とされています。また、略式命令による罰金で処理されている場合には保管期間は3年となっています。
 ですから、交通事故の場合には、ほとんどのケースでは、裁判確定から3年又は5年で廃棄されているということです。
不起訴の場合
 不起訴の刑事記録の保管期間については、検察庁の内規である「記録事務規程」の25条で、細かく定められています。交通事故に関して言えば、原則として、自動車運転過失致死被疑事件の場合には10年間、危険運転致死事件の場合には20年間とされています。
 ただし、「起訴猶予」や「被疑者死亡」等の処分の場合には、不起訴処分から1年で廃棄されることがあるので、この点は要注意です。
※したがって、不起訴処分がなされた場合には、速やかに刑事記録を入手しておくべきです。
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 このページは2017年8月8日に更新しました。内容に誤りがないように留意しておりますが、万一、誤りにお気づきの方は、こちらにメールしていただければ幸いです。
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