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逸失利益の算定方法の一般論については、別項で説明したとおりですが、この算定方法については、多くの問題があり、いまだに流動的な面があります。 その一つが、女子の若年者の逸失利益の算定方法です。 小学生の女子が、交通事故により、重度の後遺障害を負ったとすると、その場合の逸失利益をどのように算定するかについては、古くから大論争があります。賃金センサスには、男女別の統計資料と、男女をあわせた「全労働者」の統計資料が掲載されており、このうち女子の賃金センサスを使うと、極端に逸失利益が低く算定されてしまいます。 実際に計算してみるとよくわかります。 例えば、10歳の小学生の女児が交通事故により、1級の重度後遺障害を負ったとします。1級の場合には、この場合の逸失利益は、女子の賃金センサスを使うと、次のように算定されます。 |
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3,434,400円×100%×12.2973 = 42,233,847円 |
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この3,434,400円というのは、平成17年度の賃金センサスの女子労働者全体の全年齢平均賃金です。 もし、これが10歳の男児だったとすると、どうなるでしょうか? 男子の賃金センサスを使うと、次のように算定されます。 |
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5,523,000×100%×12.2973 = 67,917,987円 |
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この5,523,000円というのは、平成17年度の賃金センサスの男子労働者全体の全年齢平均賃金です。 ずいぶん、金額が違います。同じく、10歳の子供でありながら、男児は、女児の約1.6倍もの逸失利益になっています。 この点については、昔から男女平等の理念に反する」「不公正な差別だ」と批判がありましたが、最高裁判所の昭和61年の判決により、「女子の賃金センサス」を使うということが正しいとされ、以来、これが実務慣行となっておりました。 ところが、平成12年に奈良地裁葛城支部で、女児の場合に、男女をあわせた「全労働者平均賃金」を採用するという判決がでたのです。 上記のケースで、もし、全労働者平均賃金を使うと、以下のとおり算定されます。 |
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4,874,800円×100%×12.2973=59,946,878円 |
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平成12年の奈良地裁葛城支部判決のあと、全労働者平均賃金を採用する裁判例がではじめ、現在は、多くの裁判所で、全労働者平均賃金を採用しています。 ただし、現在でも、「統計上、女子の賃金センサスのほうが低い以上、女性については女子の賃金センサスを採用する。」という考え方をとっている裁判官も少なからずいます。私が地元の札幌地裁でも、いまだに「女子センサス」を使うことに固執する裁判官もいます。ただし、札幌高等裁判所は、2つの裁判部のいずれも「全労働者平均賃金」を採用していますので、地裁で負けても、高裁では逆転するということになっています(平成19年3月現在の裁判官)。 この問題は、とても重要な問題ですので、私自身の考えをまとめた文書(PDF)を参考までにアップしておきます。 |
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女子年少者の逸失利益の基礎収入<PDFファイル(1.20MB)> |
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私自身は、女子の賃金センサスは、多くの女性が担ってきた出産・育児・家事といった重要な要素が全く反映されていない点で、女性の逸失利益を算定するための適切な資料とはいえないと思っております。したがって、女子についても、むしろ、男子の賃金センサスを用いるべきではないかと思っておりますが、そこに行き着くのは、まだまだ先のことと思います。まずは、全労働者平均賃金を採用する方法が浸透することが必要と思われます。 |
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